朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
前日の夜から、そわそわと。
哲が時折、怪訝そうに視線を合わせてくるけれど、膨れ上がった別れの決定打となる事への思いに、私は落ち着かなかった。
あんな事言わなきゃ良かった、とまで思う。
私が哲に甘え過ぎて、哲が。
今、好きな人と過ごせなくても良いんじゃないか、とか。
ちょっと、思ったりもした。
大人なんだし、本気で好きならば、離れて行くに違いない、と。
「…なに?」
「え?」
下穴を開けるのは掛かりきりだけれど、仕上げの工程は、ある程度機械任せで、手があく。
モーターの回転音は正確で、0.1mmを削る音には、僅かにむらがある。
電話の音も聞こえないくらいの音ではあるけれど、哲の声は聞こえる。
聞こえないけど、唇の動きで、聞こえる。