朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
「何が……そんな泣くほど気になってる?」
哲は、私の横に立ったまま、煙草を咥えた。
泣いてなんかいない。
「…朝も。あれ、起きられたんじゃなくて、寝てないだろ」
…チクショウっ!
バレてんのかょ!
「や、全然大丈夫。元気だし目覚めは良かったし。泣いてるとかどこ見て言ってるのやら?」
「…………………」
哲は、大きく煙を吐き出すと、ならいいけど、と。
あっさりと、背を向けた。
工場の入り口付近で、婿様が哲を呼ぶ。
鉄の板の裁断をして欲しいらしい。
哲は何でも出来るから。
急に入った仕事は、大抵哲に回ってくる。
私は。
咥え煙草のまま飄々と、図面を受け取り眺める哲を。
やっぱりずっと、目で追っていた。