朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
また、ひとりになった。
頼むから、帰ってくれと。
そう、頼んだ。
遼は、ひどく傷付いたような顔をして、気まずそうに俯いたけれど。
来てくれてありがとう。
だけどもう、終わったでしょう?
って。
薄いカーペットの上で、顔をそむけてそう言った私に、ごめんね蜜、と。
でも、本気で好きなんだ。
前向きに考えて欲しい、と。
私のまぶたにキスをして、ゆっくりと立ち上がった。
遼の背は、高くて。
キーボードの鍵盤の上にあった眼鏡をかけると、そのまま、そこにあったラフマニノフの譜面を、閉じた。
「…俺……ほんと、ごめん…」
止まらなくて、と生々しい事を情けなさそうに呟き、私が反応しない事を見て取ると、諦めたように部屋を、出て行った。
何をしたのか、解らなくない。
彼は、女を抱きたかっただけだ。
好きだ、と。
おまじないみたいな、言葉。
好き、ならば。
避妊も必要ないのか。