朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
有り得ないモーニングコールに、いまだかつて経験したことの無いような素早い目覚め。
こんな勢いで血圧上がったら、ほんとに死んじゃうじゃないか、と、胸を撫でた。
ベランダで待つヒヨドリに、リンゴを出す時に感じた、締め付けられるような苦しさは、後悔というよりも、未練だと思った。
明日の練習には、行けない。
次も、行かない。
その次も。
哲も心配だし、何より、遼と顔を合わせられない。
遼だって、気まずいに決まってる。
「みちゅさ……み、つ」
ああ、婿様。
諦めるの早くなりましたね。
「ずいぶんと素直に寂しそうな顔してるじゃないか?」
「…え?」
そんなに、しょげてた?
「このままの仕事量なら午後、手が空くだろうから、ちょっと哲のとこ、行ってきてくれるかな」
「………えぇ~」
寂しそうになんか、してないもん。
どっちかっていうと…哲ではなく…遼のせいだし。
何となく、哲の顔も見たくないような、見たらいけないような。
そんな気も、するし。