朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
「…蜜……どうした」
哲が。
私の目を見た瞬間に、眉を寄せたのは知っていたけど。
すでに来ていた哲のご両親と、軽く挨拶を交わして。
これから工場の方へ伺ってから、帰ります、とか。
モーニングコール、ありがとうございました、とか。
そんな事を話してから、ご両親が出て行ってすぐに。
手首を、掴まれて言われた事に、驚いたというよりも、逃げ出したい気持ちになったんだ。
「どう…も、しないよ?」
「………」
哲は再び眉を寄せて、まっすぐに目の奥を覗き込むもんだから。
朝の電話はなんなんだ、と文句を言おうと思っていた事とか。
婿様から、ピンクな肌色を預かってきた事とか。
すっかり、吹き飛んだ。
「…ちゃんと部屋で寝たか?」
「……うん」
哲…やめて。
そんな遠まわしに、探らないで。
わかってる。
私が、どんな顔してるか、わかってる。
哲が。
それを見逃す訳が無いことも。