朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
ちゃんと、居るのにね。
哲はちゃんと、居るのに。
ちょっと部屋を留守にしただけなのに、どうしてあんなに怖かったんだろう。
例え、泣くほどに不安定だったとしても、朝まで我慢すれば。
ちゃんと、居るのに。
誤魔化せていた、遼の甘い空気を、流せなかった。
いつになく強引な遼を、怖いと感じた。
早く終わってくれ、と。
そう、思った。
遼は。
どうしたかったんだろう。
この先、どうしたいんだろう。
アレは失敗したんだと思うけど。
…故意、かも知れないよね。
もし、私が妊娠したら、どうするつも…………
「蜜」
思考を遮るように、哲の声。
ぴく、と肩が揺れたことを、後悔した。
私は哲の少し後ろをついて歩きながら、すでに病室まで戻って来ていたことに、驚いた。