朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~


ちゃんと、居るのにね。
哲はちゃんと、居るのに。

ちょっと部屋を留守にしただけなのに、どうしてあんなに怖かったんだろう。


例え、泣くほどに不安定だったとしても、朝まで我慢すれば。

ちゃんと、居るのに。




誤魔化せていた、遼の甘い空気を、流せなかった。

いつになく強引な遼を、怖いと感じた。


早く終わってくれ、と。
そう、思った。


遼は。
どうしたかったんだろう。

この先、どうしたいんだろう。



アレは失敗したんだと思うけど。
…故意、かも知れないよね。

もし、私が妊娠したら、どうするつも…………




「蜜」


思考を遮るように、哲の声。

ぴく、と肩が揺れたことを、後悔した。


私は哲の少し後ろをついて歩きながら、すでに病室まで戻って来ていたことに、驚いた。


< 169 / 354 >

この作品をシェア

pagetop