朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
…じゃあ、帰る。
と、哲の目を見ないまま。
買って貰ったチョコレートを開封した。
哲は左手が使えないから、チョコレートの個装を剥がせないと思って。
セロファンの外装を剥がす、音。
紙の箱を開ける、音。
ひとつひとつ、薄紙に包まれたそれを、口に入れるだけの状態にまで取り出し、ベッドサイドの棚に、置いた。
ひとつ、ふたつ、みっつ。
4つ目の薄紙を剥がし始めた私の手を、哲の右手が。
掴んだ。
「……………」
思わず見てしまった、哲の、目。
探るような色ではなく、何かを言いかけて呑み込んだ、揺れたような、目。
言いたくはないけれど、苦渋のような。
……甘さのような。
…………男の、ような。