朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
「…………転んだ?」
「…座っただけだもん」
転んだけど。
「ほら、携帯」
「ん、ありがとう。どうしたの?抜け出してきたの?お化けでも出た?」
私は、差し出された携帯を受け取り、なるべく怒られないように、立て続けに質問した。
「……さみぃよ。中入れろ」
玄関を閉めた哲は、怒らなかったけど、質問に答えもしない。
右手で私の腕を引き、立たせる力は、いつもの哲で。
つい緩む頬を、隠せなかった。
「今、お茶淹れる」
「生姜の」
「…ちょっと時間かかるよ?」
「………」
ああ、別に構わない、と?
良かった。
哲の部屋に11時過ぎまでいたこと、怒ってないみたいだ。
ステンレスのケトルの、音。
ガラスの瓶から、乾燥した生姜のかけらを取り出す。
紅茶の葉は、アッサム。
お湯が沸いたら。
生姜の抽出の後に紅茶を足して。
そうしたら、もう一度訊いてみよう。
……なんでいるんだよ!って。