朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
湯気が、ほんの少し香る。
ゆっくりお湯で戻すように柔らかくなった生姜のかけらは、私が干したもの。
カラカラに干せば、半永久的に使えて、ほんと便利。
哲は、私のベッドを背もたれに、床に座っている。
勝手に私の雑誌を手に取……いや、あれは哲の雑誌だ。
私が勝手に持ち出したヤツだ。
……怒られ要素が重なる。
耐熱ガラスのポットから、哲のマグカップに。
ほんのり生姜の香りのする紅茶を、注いだ。
「……ほんと、どうしたの?」
こんな時間に、病院抜け出しちゃうなんて。
「……………………」
「無視かっ」
「……………………」
…………ほんとに無視ですか。寂しいじゃないですか。
ちょっ…ちゃんと答えようよ。
小さなテーブルに、湯気の上がるマグを、置いた。
私のと、哲の。
「……蜜、が」
「……うん?」
ようやく呟いた哲の顔を、覗き込めば、ふいっと横を向……
…なんでだよッ。