朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~


そのまま哲は、ゆっくりと含むようにお茶を飲む。

私も、飲む。


しっかりと香る生姜に、ふんわりと暖かくなった気がした。


耳なじみのよい、Chicago。

借りたアルバムをそのまま入れたから、曲は滑らかに進む。

テレビは、あまり見ない。
ドラマも、バラエティーも。



「チョコレート、食った?」

「ううん、まだ」

「蜜が置いていった方、アレ旨かったな。食ってみ?」



甘いような。
苦いような。

ほっとするような。
緊張するような。


でも、哲は「哲」でいてくれるから。

怖くは、ない。
この空気は、嫌いじゃない。



私はチョコレートの入った袋を開けて、再び紙を剥き始めた。

哲のソーサーに、ひとつ置く。



「蜜」


呼ばれて、ふと顔を上げれば。

唇に、その置いたばかりのチョコレートを、押し当てられた。


少々、強引に。




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