朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
「…………くちっ」
「…ぅ?」
「開けろよ馬鹿」
ああ、食べていいのか。
なんか言って欲しかったな…
“あーん”とかなんと…
いややややや!
違う!駄目!絶対!
そんなの怖い怖い。
私はいつもみたいに、ぱかりと口を開ける。
放り込むように、舌の上に乗せられるチョコレートは、慣れた、行動。
仕事中、手も顔も真っ黒な私は、真っ黒じゃない人の手で、こうやって何かを貰う。
小さなお菓子を貰ったけれど、食べないからあげる、とか。
得意先からの配達員から貰ったものとか、誰かが買ってくれたものとか、近所の人が社長に持ってきてくれたお土産、とか。
………おかしいな。
哲の指は、こんなに緊張するものだったっけ?
ミントの香りが、仄かに。
私の思考をかき回す。
ドキドキしちゃうなんて、気のせい。
恋をしたら、終わってしまう。
雪音ちゃんに会わせるとか、付き合うとか関係なく。