朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
ねぇ婿様、GTR貸して?
いーよー、どこ行くの?
哲のお迎え
えぇっ?来週退院じゃなかったのかぃ?
「………マジですか」
婿様が、工場のシャッターを開ける音がしたから。
うちが休みでも、他に動いている社はあるし、品物が届いたりする。
誰もいなくても、工場は開けるのが、土曜日の常。
穏やかな婿様は、今朝も熊のように大きくて、濃すぎる髭がなんとも愛らしい。
「ご両親、そう言ってたよ?」
「…………」
哲が迎えに来いって? と、くるくる良く動く愛嬌のある目で、婿様は私の顔を覗き込んだ。
「…ぃえ…ただ、今日の午前中に帰るから、って…」
……嘘かな!?
ねぇ婿様、哲、嘘吐いたかな!?
「さてはヤツめ…みちゅさ…みちゅと会えないのが寂しいな!?」
や。
何てこと言うんだこの熊。
つーかいちいち、人の名前を呼び損ねて言い直すなよ。
「よーし!俺が迎えに行ったろうじゃないか!」
……えぇぇ?