朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
「だから、行ってやるから」
だから?
だからって?
そうしたら、私は哲が好きだから、って事になるんじゃない?
って。
言えなかった。
だって、楽団には雪音ちゃんもいる。
哲は、それでいいの?
「…駄目、だよ。なんか、色々駄目」
「なんで」
「………なんでもっ」
ふいっと、そっぽを向いた私は、雪音ちゃんの柔らかそうな肌を思い出して、息を整える。
迎えになんか、来てくれちゃったら。
私は遼を、ひどく残酷な目に合わせてしまう気がする。
私の目の前で、哲と雪音ちゃんがキスをしたら、きっと感じる、骨から肉が剥がれるような。
不快で、怖くて、悲しくて。
弦楽器の弦が切れた時のような、全身が泡立つような、嫌な気持ちになるんだと、思う。
きっと遼は。
誰とでも寝る人じゃない。
私とは、違う。
きっと。
ずっと好きだった、って言ったのは。
詭弁なんかじゃ、ない。