朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
「あ、うまいわコレ」
「マジで!?」
珍しく、哲が自発的に褒めた!
湯気の上がる、牡蠣と春菊のスパゲッティ。
玉ねぎと卵のコンソメスープ。
私は拭きの甘い、洗い晒しの哲の髪を気にしながら、きっとすごく嬉しそうに笑ったんだと思う。
哲が人の顔を見て、小馬鹿にしたように笑った。
だって、普段あんまり褒めてくれないから…。
たまに褒めてくれた時くらい、喜んだっていいじゃないかっ。
哲は。
いわゆる“腹減らかし”だと、婿様がいつも笑うくらい、いっぱい食べる。
それを見ているのは、面白いような、不思議なような、幸せなような。
ポタポタと。
哲の髪から雫が垂れている気がする。
私は気になって気になって。
哲の背後にまわって、その赤い髪を、タオルでこすった。