朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~


……………多い!

多いよ哲!
飲み込めないよ!!

唇にソースついたじゃないか!


と、私が必死に口を動かしている間、哲は私の平皿に、牡蠣を放り込む。

可笑しそうに唇のピアスを光らせながら。



「て…つ…!」

「なに」


何じゃないよ!
私ちゃんと食べようと思ったのに!


「だって遅いから」

「…いっ…いつもの事…!!」

「そうだけど。ああ、熱かった?」


一応、冷ましてやったつもりだったんだけど、って。

からかうように笑う哲は。


ステージで歌う哲とは、違う。

違うけど、同じくらいセクシーで。


濡れたままの赤い髪。

眉についたピアス。
唇の、ピアス。

私にだけ話しかける、声。



なんだかずっと、こんな風にじゃれあって行けたら幸せだなあ、なんて。

哲、怪我して良かったなあ。

このまま雪音ちゃんに会わせなくて良くなればいいのに、なんて、私は。


ひどいことを、考えていた。



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