朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
「…こんばんは」
「…………こんばん、は」
ドアノックを、無視するわけに行かなくて。
だけど、部屋に上げるわけにも、行かなくて。
ドアを開けたら、もうそこに。
遼は、立っていた。
「…今日……来なかったから」
「…うん」
ほら、壊れてる。
笑うことすら、出来やしない。
気まずくて、気まずくて。
今までみたいに、眼鏡を褒めたりとか、出来なくなってる。
友達じゃ、なくなってる。
「…もしかして、こないだ、の事で、来なかった…かな…?」
そう、とも、言いにくかった。
できるだけ、できるだけ、責めたくはない。
してもいい、と言ったのは、私だ。
「……あ、のね」
眩暈が、する。
ドアを開けたまま、何気なく押さえている遼の手が、怖い。
この人“男”だった。
この手“男”だった。
開いたドアから吹き込む風は、むき出しの足に、刺さりそうに冷たくて。
ふと掠めた遼の匂いに、激しい拒絶感が、込み上げた。