朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
一歩、踏み出した遼との距離を保とうと、一歩下がった。
「…蜜、俺………」
「………」
また一歩。
駄目だよ、このままじゃ、ドアが閉まる。
遼と私を閉じ込めて、ドアが、閉まるよ。
「……駄目、なのかな」
俺じゃ、蜜の傍に。
いられない、のかな。
「…俺、別に、勢いだけでした訳じゃ、ないんだ」
蜜が、好きなんだ。
蜜を、好きなんだ。
もっとずっと、一緒に。
囁くような、呟くような、切羽詰まったような、遼の、声。
私の頭の中は真っ白で。
心臓は止まってるんじゃないかってくらい、苦しかった。
「そんなに……、嫌だった?」
ああ。
駄目だ。
遼は靴を履いたまま。
私もミュールを、履いたまま。
距離が。
私を呑み込む。
嫌だった、って言ったら。
壊れたものを更に粉々にしてしまう?
私の中では壊れたものも。
遼の中では、壊れてないんだ。
最初から。
最初から「蜜」は「女」だったんだから。
私が勘違い、してただけ。