朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
遼は弾かれたように、慌てて私から、手を離した。
私はもう、遼を“遼”として、認識出来なかったのかも知れない。
怖い、と思った。
手を離してくれたのに。
哲にだけは、見られたくない。
こんな情けない格好、見せられない。
でも悲鳴を、上げてしまった。
音楽でも聴いていてくれて、聞こえてなければ、いいけど…。
そんな風に、一瞬思った。
のに。
「…………ッ…!!!」
突然、遼が私の上に、崩れ落ちてきた。
私は再び悲鳴を上げそうになって、必死で飲み込む。
不自然に頭を上げた遼の後ろに、哲の……見たことのないような、怒りの滲む赤い、髪。
遼の髪を掴み上げ、ドアを出た所で、足元にねじ伏せた。
「……何しちゃってんの」
低い、声。
私が聴いたことのない種類の、哲の声。