朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~


「……蜜?」

「……あ、うん…」



どうしよう。
なんだか緊張する。

こんなに、哲を意識したのは初めてかも知れない。



「飲めるだけ飲んだら、ちょっとここに寝ろ」


奇妙な緊張は、解ける様子がない。

ここに寝るな、とはよく言われたけれど、寝ろなんて。



ひとくち、口に含んだ。

飲みつけない度数のアルコールは、一瞬で私の喉から、胃までを熱く焼いた。




「…んんんんん………っ!」


熱い熱い!
痛いよこれ!



「もうひとくち」

「…ぅんんん……」



私は言われるままに、口をつけ、セントバーナードの首についた小さな酒樽の意味を、身を持って、知った。



「も……むり…っ」


セントバーナードは、酒に弱い遭難者にも、こうやって無理に飲ませるんだろうか。


焼けるように熱くなった胃が、温まった血を、全身に、流し始めた。



< 239 / 354 >

この作品をシェア

pagetop