朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~


哲はあの日、一晩中私を抱えていてくれた。

変に意識したのは、私だけ。


わざと、いつもみたいに。

子供のようにもそもそと擦りよる私は、いつものように軽くあしらってくれなかった哲に、緊張した。


…布団の中でなんか、すり寄った事はないから。

もう、腹立たしいくらいに、緊張した。


アルコールの力で上がった鼓動は、喉元で鳴る。

内側から鼓膜に響く、心音。


哲の体温と、私の体温。

布団の中で同じ温度になってもまだ、抱えていてくれた。



思い出しちゃいけない。
思い出したら、緊張する。


あの哲は“哲”だったけど、どこまでもどこまでも、異性だった。



ヤバいほどに、好きだと。
認めてしまったんだから。



< 243 / 354 >

この作品をシェア

pagetop