朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
じゃあこっちで決めるから、決まったらメール入れとくね。
と、電話を切った私を、雪音ちゃんが覗き込む。
「哲さんて、蜜さんのお隣さんですよねぇ?」
クラリネットの継ぎ目に、グリスを薄く塗りながら、雪音ちゃんはその大きな目を、くるくると楽しそうに煌めかせた。
「赤い髪の」
「そうそう。ピアスの。映画、観たがってたから、ちょうどいいかと思って」
嘘だけど。
こんな機会に、哲と雪音ちゃんがちゃんと知り合えば、きっとうまく行く。
「哲さん、カッコいいですよねぇ」
ふわふわと笑顔を見せる雪音ちゃんに、僅かに心苦しいような気がして。
思わず慌てて、トランペットのケースを、開けた。