朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
「も…無理」
耳元で聞こえた声は、絶対に聞いたことのない、声だった。
「…蜜」
と。
私の名前を呼ぶのは紛れもなく哲の声なのに、オクターブが…いや、ピッチが?強弱が?
込められた、感情が?
なんだか全てが違う気がして。
肌が粟立つほどに、ぞくりとした。
「て…哲、哲……っちょっとだけ…怖……っ…」
耳の奥の辺りで、鼓動と、それに合わせて流れる血の、音。
哲の髪が、耳を掠める、音。
「怖くしない、から。大丈夫」
処女じゃあるまいし、何て事を言わせてるの私。
と、頭のどこかが冷静にそう囁くけれど、初めての時だって、こんなにはドキドキしなかった。
ような、気がする。
こんなにも、哲の指先が、思考を乱すものだなんて、知らなかった。
強く、弱く。
きつく、ゆるく。
もう、手は挟まれていないけれど、腕ごと抱え込まれた体。
私の羞恥心もコンプレックスも、全て。
哲に、全て。
呑み込まれ、たい。