朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
哲の手は慣れている、と。
そう、思った。
損な性格をしている、と自分でも思うけれど、慣れた手付きは、かつてこの手が触れてきた女の子の存在を、彷彿とさせた。
男は女の初めての存在になりたがり、女は男の最後の存在になりたがる、なんて。
どこかで、そんなことを聞いたけれど。
確かに、私が最後ならいいと。
確かに。
そうは思うけど。
自分の事を棚に上げて、哲の過去の恋愛を、気にする時が来るなんて。
それも、哲のベッドの中で。
ここに、誰か寝たことがあるんだろうかとか。
こんな風に、してたんだろうか、とか…
「…蜜、…挿れていい?」
「……っ…」
頭の中は、そんな事でいっぱいだったのに、慣れた手は、唇は。
私に息をつかせてくれない。
いいよ、とも。
待って、とも。
声に出せないまま、あてがわれた質量と熱とに、一瞬、腰を引いた。