朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
確かに、何もかも投げ出して出掛けたのは私。
ただそれは、出掛けたというより、誘拐されたようなもので。
今までも特別な存在ではあったけれど、更に特別になった哲との関係は、何が変わっただろう?
私はとことん面倒な女で。
無意識に。
哲が私に飽きるまでの関係、だとか。
飽きられたら、どう整理を付けようか、だとか。
そんな事ばかりを考えていた。
「…蜜?」
さっさとリンゴを切った哲が、それを私に手渡しながら、困ったように、顔をのぞき込んだ。
「…俺…いなくならないよ?」
「でも私、餌貰えなくなるんでしょう?」
「はぁ?」
「……釣った魚に餌はやらないもんなんじゃない?」
私はひどく面倒な女で。
そんな事ない、って言って欲しいだけなのかも知れないけど。
口に出さなくても良いことを、ぽろりと、こぼした。