朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~


「…蜜、練習?」


哲は、きっと紅茶を淹れている。

細かく刻んで、蜂蜜に漬けたレモンの瓶を、冷蔵庫から取り出したから。

夏にたくさん貰った時に漬け込んだ、レモン。
そのまま食べても美味しかったけれど、紅茶に入れるとまた、爽やかに甘くて、いい。



「…うん、スタジオ取ってるんだって」

「そか」


言葉は、いつも少ない。

けれど哲は、カチャカチャとカップをかき混ぜる音を立ててから、良かったな、と。

唇のピアスに笑みを乗せた。




良かった、のかな。

私、トランペット、吹いて大丈夫?

遼と合奏して、大丈夫?



私が大丈夫でも、遼は?

…辛かったら、どうしよう。




哲が、湯気の上がる蜂蜜レモンティーをふたつ、テーブルに置いた。




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