朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
避けて通れなかった、遼との話。
遼は。
ひどく気まずそうな、それでいて少し安心したような、複雑な笑みを浮かべて、私に手を挙げて挨拶を、した。
団長は、やっと来ましたね、昨夜からずっとここで待ってたんですよ、と、うそぶく。
遼も、トロンボーンを持っていて。
金管八重奏の他のメンバーは、あと30分後に来るらしい。
「蜜サン、彼は?」
「かっ…彼!?」
「…哲くん、来ると思った」
ええっ!?
哲、彼!?
「やっ…ちょっ…彼とか!」
なんて恥ずかしい響きなんだ!!
確かに“彼”かも知れな……いかも…知れないけど!
ふ…不意打ちとは卑怯な……!!
「蜜サン……可愛いですね、そんなに真っ赤になるほど好きですか」
「ほんと、最初からそういうふうに…してれば…」
俺、期待しなかったのに。
苦笑に混じって、本当に苦いかのような色の滲んだ、遼の言葉に、もう、ごめんなさいとしか、言いようがなかった。