朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
「ああ、ちょうどいい。Whole Lotta Love、歌ってあげるから」
「けっ…こん?」
「まだそこかよ」
だって。
だってびっくりした。
急にそんなこと言うなんて!
しかもちょっとウトウトしてる時に!
「嫌?」
赤い髪が、私の視界を遮る。
こんなの、こんなの、ズルい。
こんな距離で、そんなこと言うなんて。
…だけど。
「…いつ、歌ってくれる?」
「蜜がそれを書き終えて、最初のライブで、どう?」
唇のピアスが、私を掠める。
じわじわと。
じわじわと込み上げる、熱い緊張に。
私はそっと、赤い髪に指を差し込んだ。
無くしたくなくて、逃げ出した私。
私がどれだけ誤魔化しても、きっと全部、知っていた。
私が目を逸らす箇所も、怖がる箇所も。
「……早く、書き上げる、ね」
Whole Lotta Love。
胸いっぱいの、愛を。
~fin~