朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
帰って行く遼が階段を下りる音を、まだ少し緊張したような気分で聞いた。
19、20、21…。
うちは、一階が倉庫なせいか、一般の二階建てよりも少し高さがある。
22、23。
遼の靴底が堅いのか、金属の階段に、ちょうど23回、よく響いた。
二階には、私の部屋と、哲の部屋。
それだけだ。
遼の車のドアが開く音は聞こえるけれど、もう姿は見えない。
私は、妙にセンチな気分のまま、携帯に付いた二個の鍵を、手の中でこすり合わせた。
「蜜」
「あ、起きてたの?」
遼の車がエンジン音を上げるのを待っていたかのように、哲が顔を出した。
「なんか、食ったか?」
「今から、ケーキ食べる」
「だけ?」
「…うん、そのつもり」
「馬鹿」
………すぐ馬鹿って言う…。
いいじゃないか。
ケーキ食べればカロリー充分でしょう?