朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
ほら寒い。
夕方から誰もいなかった冬の部屋は、寒い。
昼間、哲と買った、乾燥パスタの山と、パスタソースにする為のパルメザンチーズの塊が、シンクの横に積んだままだ。
パンを作るには強力粉だけれど、高いし、融通も利かないから私はいつも薄力粉で作る。
いや、たまには強力粉も買うけど、意外と普通に焼き上がるものだ。
その薄力粉も、積んだまま。
明日は、休み。
パン生地を作ろうと思っていたけど、遼と出かけることになった。
きっと朝になれば、遼も忘れているに違いない。
きっと、気分の悪い私が、“女”に見えたのだろう。
そうじゃなきゃ、迷うわけない。
よし、明日は、元気にじゃれつこう。
いつもみたいに、どーん、と。
男女である事なんか、気にならないほどに。
「……私にドキドキしたってしょうがないのに」
シンクで水を出し、手を洗おうとしたけれど。
あまりの水の冷たさに、いつになく適当に、水を跳ね飛ばした、だけ。