朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
「……さむっ」
哲の、開口一番だ。
「だから寒いって言ったじゃんか…」
ちょっとちょっと、と、真空パックにされたドリップコーヒーの袋を2つ、テーブルに投げ出した哲を手招く。
「ほら、手すごい冷たい!」
「…………ッ…!!!!」
ぺたりと、濡れたままの両手を、哲の首を絞めるかのように、しっかりと貼り付けた。
「み…ッ…蜜っ……!!」
「ああ~哲の首あったかい~」
赤い、襟足の髪が、手の甲を覆ってくれてる。
今まで暖かい部屋に居たんだから、髪に含まれた空気も、暖かい。
小指に当たる、ドッグタグのチェーンですら、温かい。
仕事中は、危ないから頭にタオルを巻く哲の髪は、少し硬くて、遼の感じとは全然違う。
「おまっ…なんで車で送られてきてこんな冷た…っ…」
それでも哲は、首に貼り付く私の手を、その上から手で覆う。
嫌そうな顔をしながら、両手で剥がし、包んでくれる。
ああ。
…お腹、すいたかも知れない。