朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
「…貧血起こして、練習、中断させちゃった…」
「…食わないからだ」
冷たい手は、貧血のせいかも知れないし、寒さのせいかも知れないし、もしかしたら遼の空気のせいかも知れない。
「哲、お腹すきました!」
「…ケーキ、食うんだろ?」
「足りません!」
「…………」
哲が、笑う。
私の手を離して、いつものカーキ色のパーカーのポケットから、コンビニおにぎりを取り出した。
一個、二個。
「欲しい?」
「うん!欲しい」
「どっちがいい?」
両の手のひらに1つずつ。
イクラと、イクラ。
「……私には同じに見えます」
「俺にも同じに見えます」
「………じゃあ、こっち」
「あ、俺もそっちがいい」
ええぇぇ?
同じ、おにぎり。
こっちがいい、と左手を指差せば、哲もそっちがいいと言う。
なんだとう…?
「やだ!私、絶対こっちがいい!」
引ったくるように、左手のおにぎりを奪い取れば、哲は更に笑う。
それはもう、楽しそうに。
「はいはい、そっちあげます」
「…………」
いちいち……
腹の立つ…!!!