朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
「言ってねーし、忘れてた」
ペリペリと包装を剥がして、上手に海苔が巻きついたおにぎりを私に手渡し、2個目の包装を剥がし始めた哲は、さっき真也に言われて思い出した。
と、照れたように、そっぽを向いた。
「…え、ライブする事自体を忘れてたの?」
私に言うのを忘れた訳じゃなく?
こくり、と頷いた哲は、ちらっと私を見ると、眉を下げて、誤魔化すように笑う。
「蜜…俺、声出ないかも。歌えなかったらゴメン」
笑いながら、私の目を覗き込む仕草が、わざとらしくおどけていて。
それなのに、甘やかされているような安堵感が、ある。
「真ちゃんに…怒られたでしょう…」
私は、だんだん暖まる部屋と、哲との距離と、居心地の良さを。
雪音ちゃんに譲ろうと、している。