朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~


バスルーム、と言っても、小さな浴槽に、狭いスペース。

一応、年頃の女の子として、可愛い入浴剤やシャンプーは大好きだけど、いかんせん、仕事がいかつい。鉄工所だ。

せっかく可愛いバスグッズを集めても、バスルームの隅から錆びてくる。


いくら綺麗にしたつもりでも、僅かな鉄粉は、浴槽をも錆びさせた。


私は髪を梳きながら、鏡を覗き込んだ。



「…不味い顔になってるな…」


自分で見ても、泣き出しそうな目に見える。

こんな顔するくらいなら、寝たりしなきゃいいのに。


髪を見れば、少しくすんで見えた。

明日は、土曜日だ。
仕事も休み。

髪を黒く染め直して、何か食べて。

それから、隣の奴に遊んでもらおう。



夜は、トランペットを吹きに、社会人吹奏楽団の練習。



服を脱ぎ捨てた左胸に、くっきり付いたキスマークが目に入り、本格的な吐き気が、私を咽せさせた。



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