朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~


赤い髪が、乱れる。


銀のピアスが、光る。




思えば、哲を最初に見かけたのは、ここだった。

私は今と同じ一番後ろのカウンター席に座って、哲の最初の声に惹かれたんだ。


ギタリストばかりを見ていた私にとって、「声」が気持ちいいなんて初めてだったから。


すごく腹立たしい思いで、思わず睨みつけたんだっけ。

…今でもちょっと腹立つんだけどね。



だって、楽器でもないくせに、その音域の広さはズルい。

楽器ではないから、急には切り替わらない音の隙間が、ほんのわずかにセクシーで。



この人とは、絶対に寝たくない、と。


そう、思ったんだ。






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