ほどよいあとさき
朝礼が始まる30分前には席につき、今日の仕事の段取りを考える。
午前中に予定されている会議の資料のコピーは昨日完了しているし、部長が明日から出張だということで、事前にお願いしなければいけないあれこれ。
それも全ての準備が終了している。
経理部に配属されてから3年が経過し、日々の業務をスムーズにこなせるようになってきた。
パソコンの画面に呼び出していたスケジュール表を再度確認して、忘れている案件はないと頷く。
うん。今日も頑張ろう。
机の上のコーヒーを飲み干して、席を立った。
給湯室に行って、お茶の準備をしなきゃ。
次々と出社する同僚たちに「おはようございます」と挨拶しながら給湯室に向かっていると、
「神田、今いいか?」
背後から声をかけられた。
振り向くと、椎名主任が私を手招いている。
グレーの細身のスーツは端整な顔を更に素敵に見せているし、紺地に小さな黄色のドット柄のネクタイもまた同じく。
というよりも、顔が整っていれば、何を身に着けていても素敵だと、そのまま体現している椎名主任。
朝いちからその整った顔を向けられて、どくどくと鼓動が跳ねるのを抑えるなんて、無理無理。
声をかけられた瞬間に熱くなった体を、どうにか鎮める努力をしながら
「あの、何か……」
ゆっくりと椎名主任のもとへ行った。