ほどよいあとさき
③
社長室に議事録を届けたあと、気持ちが落ちて浮上できないままだった私は、気持ちを切り替えるために、休憩コーナーでぼんやりとしていた。
すると、出張から戻ってきた相模主任がやってきて、私の隣の椅子に腰をおろした。
「あ、お疲れ様です」
慌てた私に、相模主任は眉を寄せてつぶやいた。
「風邪でもひいたのか?顔色が悪いぞ?」
「いえ、風邪じゃないんですけど……」
「どうみても体調が悪い。医務室で休んでもいいぞ」
「あ、大丈夫です。すみません」
朝から現場に顔を出していた相模主任も疲れているはずなのに、小さな声で頭を下げた私に、優しい瞳を向けてくれる。
「俺のサポートに来てもらったのに、なかなか面倒をみれなくて悪いな。
慣れない部署で緊張もしてるだろうし、そりゃ体調も崩すよな」
休憩コーナーでコーヒーを飲む『相模恭汰』は、やはり『相模恭汰』だ。
何気なく座っているだけで、絵になるし目が離せない。
単に見た目が整っているだけではない何かがあるんだろうな。
これが、カリスマって言われる所以なのかもしれない。