甘いアイツのお気に入り
「ねぇ、鮎川莉子ちゃん」
使われていない空き教室で、目の前の黒髪の男の子があたしを呼んだ。
「え、な、なに……!?」
何で名前を知ってるんだろう、なんて考える暇もなく。
ジリジリと距離を詰められたあたしは、
驚いて後退り。
気づけばトンと壁に背中があたった。
そこで、やっと自分の置かれてる状況に気づいた。
男の子と壁の間に、あたし。
――もしかしてあたし、ピンチ、なの?
ど、どうしようどうしよう。
背中にタラリと嫌な汗が流れる。