【完】俺が消えてしまう前に
第1章
・記憶喪失男
「───つき!・・・樹!!」
誰かに呼ばれてる気がする。
「樹・・・樹!!」
目を開ける事ができない。
「お願い・・・。神様・・・」
悲しい声の、男の人と女の人。
この人達は誰だろう。
「・・・っ!」
目を覚ますと、そこはどこかの公園だった。
周りは真っ暗。
人気もないようだ。
「ここは、どこだ」
長い夢を見ていた気がする。
だけどそれが何なのか思い出せない。
思い出そうとすると頭が痛くなる。
「・・・とりあえず、歩いてみるか」
公園を出てみると、すぐに街中に出た。
どうやらここら辺一帯は都会らしい。
「俺はこんなところまでどうやって来たんだ?」
素朴な疑問を思い浮かべながら真っ直ぐ伸びた道を歩く。
そして、もう一つ疑問が生まれた。
「そもそも俺はどこにいたんだ」
自分がどこの誰なのか、
どこに住んでいたのか、
何歳なのか、
両親は誰なのか、
何も思い出せない。
「樹・・・木戸、樹」
唯一思い出せたのは自分の名前だけだった。
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