【完】俺が消えてしまう前に
女子高生に、
高校生らしき男。
そして5歳児。
そんな俺らを珍しく思ったのか何なのか、
まわりの奴らがひそひそとこっちを見て話し始めた。
「・・・周りが騒がしいから別のところ行かね?」
俺の提案に七海は賛成した。
愛希の右手を握り、俺は歩き出す。
その隣を七海も歩き始めた。
「じゃあ愛希ちゃんの家までいこっか」
「うん!なっちゃん!」
人懐っこい愛希。
すぐに七海に懐くようになった。
「そういえば七海」
「何?」
「学校はいいのか?」
「・・・」
急に黙り込む七海。
俺らを包む空気が一気に冷たくなった。
「な、七海?」
「大丈夫!平気平気。友達にメールしとくし」
さっきの雰囲気はどこに行ったのか・・・。
急に七海は元気な声をあげた。
それがどこか無理をしているように見える。
「大丈夫ならいいんだけど」
「うん!ねー愛希ちゃん♪」
「え!?なに?なにがなにがー?」
空気を理解してない愛希に七海は微笑みかける。
明らかに話を逸らした証拠だ。
・・・まだ出会って間もないし、すぐ心を開いてくれるわけないか。
俺は心を開きたいっていうどころじゃないし。
記憶がないから。
とにかく、
この二人に会えた事は奇跡に近いんだろうな。
**