【完】俺が消えてしまう前に
母さんは立ち上がり俺達の方向にきた。
「愛希、愛希・・・いるのね?」
「まま!いるよ、あきここにいるよ!」
「ごめんなさい、今までずっと近くにいてくれたのよね?」
「いたよ、あきずっといたの」
「気付いてあげられなくてごめんね」
「いいよ。ままだいすき」
俺はその光景を見守った。
綺麗な親子の愛。
少しだけ俺にはまぶしい。
「ちょっと、いいか?」
今度は父さんが立ち上がり、俺達の方に来る。
「樹、いるのか」
「・・・!」
「いるんだな」
「いるよ。聞こえてないだろうけどさ」
「すまなかった、愛希が死んでしまった後お前にちゃんと向き合ってやれなくて」
「謝んなよ」
「お前は知らないかもしれないが、捜索願も出した。探すなと言われたがずっと探していた」
「・・・」
「今、何故お前は幽霊なんかになっているんだ」
「父さん・・・」
「事故か?病気か?・・・一体どこで死んでしまったんだ。お前のお骨も、何も来ていない。戸籍上まだ親子じゃなかったからな。今からでも遅くない。お前の事を養子としてひきとりたい」
「何馬鹿な事言ってんだよ」
「樹、お前の声で教えてほしいんだ。出てきてくれ。お願いだ。一瞬でもいい」
不思議な力。
この世にはたくさんある。
桃子が何か小さな声で呟くと
俺と愛希の周りが小さく光始めた。