【完】俺が消えてしまう前に
太陽が沈み、
七海が風呂と夕飯を済ませ
ベッドに入る頃になった。
俺に睡眠は必要ないけど
七海は落ち着かないんだろう、客用の布団を用意してくれている。
それは出会ってから毎日だ。
得体のしれない男だったし、
幽霊だと知った後でも続けてくれている。
「樹君、おやすみ!また明日ね」
「おやすみ」
七海がベッドに入り目を閉じる。
数十分たった頃、寝息が聞こえるようになってきた。
俺はそんな七海を覗き込む。
まじまじと七海の寝顔を見ていると
結構発見がある。
実は目の横に小さなほくろがあるとか、
まつ毛が結構長いとか。
「おら」
俺は人差し指で七海の鼻を少しだけ触る。
ちゃんと触れるわけじゃないから見た目だけ。
その後は七海の髪をゆっくりと撫でた。
「・・・俺が、生きてたら良かったのにな」
絶対に叶わない願い。
そして叶わない想い。
こんなにも辛いのなら、無理やりにでも消えてしまいたい。
そう思うようにもなった。