【完】俺が消えてしまう前に


翌朝。


桃子はまだ起きていない時刻に、俺は聖子さんの場所へ向かった。



「あー樹じゃん。おっはー」


「俺の方見てないのに分かるんだ」



聖子さんは昨日と同じ場所でソファに座っていた。

俺には背を向けている。




「あったり前でしょ。あたしをなんだと思ってんの」


「霊媒師」


「はいせーかい!」


「んじゃさっそく本題入るけど」


「どーぞ」


「俺を除霊してほしい」



さすがの聖子さんも俺の方をゆっくりと振り向く。



「それ、本気?」


「本気」


「朝早くからあたしを訪ねてくると思ったら・・・。なんでまた?」


「色々理由はある。けど、それを言う必要ないでしょ」


「正論だね。人にはそれぞれ言いたくない事もあるし」


「・・・今すぐしてくれるならしてくれ」



もう心の準備もしてある。

昨日桃子にも自分の気持ち伝えたし。


最後に七海の笑顔を見たかったけど、そんな我儘言ってられない。


成仏すれば、今のこの気持ちが全てなくなる。

それは俺にとってどんな天国よりも最高だ。
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