【完】俺が消えてしまう前に
桃子がいなくなった後、俺と七海はひたすら抱きしめ合っていた。
むしろ俺が七海を離さなかったといっても過言ではない。
「あっ・・・樹君。ごめん・・・」
七海が気付いた時にはもう遅い。
俺から離れようとした七海を俺はぐいっと引き寄せる。
「えっ・・・樹君?」
「離さねぇよ。誰が離すかっつーの」
「・・・喋り方、なんか違うね」
「うるせぇ。俺は俺だ。喋り方とかいちいち気にすんな」
「これも、樹君だもんね」
「そうだよ。全部俺」
「・・・あはは。うん」
「・・・七海」
「何?」
「ごめん。俺、本気で好きなんだよお前が」
「・・・」
「水族館に行った時、お前が俺を大切だって言ってくれて嬉しかった」
「・・・ん」
「俺もお前が大事で、だけどこんな気持ちちゃんと伝えられなかったんだ」
「・・・私も、だよ」
「七海も?」
七海は俺の腕の中で語りだす。
小さな鼓動の音が心地いい。