【完】俺が消えてしまう前に
そして俺のかじったであろう部分にかじりついた。
「・・・」
「・・・ど、どうだ?」
「なんか、味がないっていうか・・・。こう、生きてる感じがしない感じ」
「なんだそりゃ笑」
周りの奴らがざわざわし始める。
七海の学校の連中やら、通りすがりの奴ら。
俺は七海の腕を引っ張り、
俺と愛希が出会った公園まで連れて行った。
「どうしたの?樹君」
七海は何も分かっていないようで、自分のクレープをほおばっている。
「・・・なんでもねぇよ」
今の一瞬一瞬が俺の宝物として重なっていく。
七海と過ごしているこの時間を絶対に忘れたくない。
こんな風に思ってしまうのはある事が原因だ。
自分の中で、少しずつ分かり始めた事があるからだ。
それは、
もう俺の時間が長くはない事。
「んまー!樹君も私の食べてみなよ!」
「味無くなるんだろ?やめとけよ。あ!よそ見してるから俺のチョコバナナ落ちたぞ!!」
「ああっ!ごめんごめん笑」
「笑い事じゃねぇ!!!」
「食べ物の恨みは恐ろしいってこの事!?きゃーっ」
「おい待て!」