【完】俺が消えてしまう前に
・君が名前を呼んでくれたから
七海side
数か月。
樹君が成仏してしまってから。
私は愛想笑いの日々を続けている。
「なっちゃん」
「あ、ももちゃん」
「・・・上も羽織らないで。寒いでしょう?」
「平気だよ」
「我慢しないの」
そう言いながらももちゃんは私にカーディガンを肩にかけてくれた。
もう白い雪がちらつく季節になってしまったんだ。
私は教室を出て、廊下の窓を半分開けた。
そしてそこから外を見渡す。
はぁっと息を出すと白いもやになりやがて消えていった。
「なっちゃん、樹さんを思い出してるの?」
「・・・うん」
「私にあいさつもしないで。勝手に成仏しちゃうんだから・・・。お母さんも少し怒ってたわ」
「あはは、急だったしね」
「寂しいわよね。愛希さんがいなくなった時もそうだったけれど」
「・・・うん」
あれから何度樹君の名前を呼んだだろう。
どうか聞こえていますようにと何度も願って。
愛希ちゃんのお墓は分かるのに、樹君のお墓は一向に見つからない。
七星さん、私のお姉ちゃんのお墓にも樹君はいなかった。