【完】俺が消えてしまう前に
ふと、雪が止んだ気がした。
だけどそんなはずない。
もしかしたらももちゃんが帰ってきて傘をさしてくれたのかもしれない。
そう思い目を開けた。
目の前には黒い傘。
やっぱりももちゃんだ。
「ももちゃんごめ・・・」
後ろを向いて感謝とごめんねを伝えようとした。
だけど違ったの。
そこに立ってるのは、普通はいない人。
だけどちゃんとそこに立ってるの。
「七海」
私の大好きな声で
私の名前を呼ぶ。
「どう、して・・・」
「ただいま。七海」
「なんで?嘘、あの時・・・」
「七海が俺の名前を呼ぶから、帰ってきた。なんてな」
そうやってハニカミながら言う彼。
私の
大切で、大事な
この世で一番好きな人。
もうあの愛しい姿で会えないと覚悟していた。
心に焼き付けていた彼の顔。
「樹君・・・!」