【完】俺が消えてしまう前に


「愛希を、連れてきたって・・・言ったそうじゃないか」


この人は・・・
愛希の父親だろうか?

少し目や鼻の形が愛希に似ている気がする。


「ぱぱー!!」


愛希もその人を見てこう呼んでいる。

・・・でも、やっぱり様子がおかしい。



「もう、これ以上、妻をおかしくさせないでくれ」


「おかしくって・・・愛希ちゃんは現にここにいますよ・・・?」


七海がそう言う。

その言葉を聞いた途端に、愛希の父親は怒鳴り声をあげた。



「やめてくれ!!もう十分だ。愛希も失い、次は妻も失えと言うのか!?心を病んでるんだよ!!妻は!!・・・俺はもうどうすればいいのか分からない。これ以上・・・家庭を壊さないでくれよ!」


その後ろで愛希の母親は泣きわめいている。


愛希はその姿を見て、辛そうな顔をした。

そして、
たたたっと駆け寄った。


小さな手を愛希の母親の頬に伸ばす。



しかしその手が頬に触れる事はなかった。

すーっと顔をすり抜け、
勢いで愛希は壁の向こうまで通り抜けてしまう。





・・・俺は夢を見ているんだろうか。

愛希が、幽霊?

非現実的な出来事が今目の前で起きている。




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