【完】俺が消えてしまう前に


「・・・どうして!」


俺は動こうとして全身の強い痛みに気付く。


「いてぇっ」


「動かないで樹」


「父さんたちはここにいるから」


「やっぱり・・・。ここはあの世なんだな?」



俺が二人にそう確認すると首を横に振る。


「だって父さんと母さんは死んだはずだろ!?」


「・・・樹が飛び降りて、病院に運ばれて。だけど一向に目を覚まさなくて。貴方までこっちに来てしまうんじゃないかと思ってしまったの」


「そんな事させたくない。七星がこっちに来てしまった時父さんたちはびっくりした。あまりにも急だったから。・・・だけどまだ、お前は生きられる望みがあったから」


「だからお母さんたちずっと祈っていたの。神様、どうか樹を助けてって」




もしかして、
あの時からずっと父さんと母さんは祈っていてくれていたのか。



だけど俺は幽霊になって外を出歩いていた。


何かのきっかけで魂が・・・体に戻った?

俺は・・・死んでいなかった・・・。




「良かった、樹」


「・・・七星!?」


「これでようやく成仏できるね」


「じょ、成仏って・・・待ってくれよ」


「もう消えかかってるから」





よく見ると七星や父さんと母さんの体はもう消えかかっていた。

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