【完】俺が消えてしまう前に
愛希は少し泣きそうな顔をして、
今度は父親に抱きつこうとした。
だけど、
やっぱりすり抜ける。
何度も何度も挑戦するが、成功しない。
「・・・どうしてぇ?あき、何かした?ぱぱとままにきらわれちゃったの・・・?」
愛希はとうとう泣きだした。
俺は突っ立ったまま何もできない。
「帰ってくれ」
愛希の父親に促され、俺らは家を出た。
泣きじゃくる愛希を俺が抱きかかえながら。
「ままもぱぱもあきがきらいなんだぁああああ」
「違うぞ、愛希、落ち着け」
何度も背中を優しく撫でてやる。
だけど一向に愛希は落ち着かない。
七海も切ない瞳で愛希を見る。
「愛希俺らがついてるから」
その言葉を聞いた愛希は少しずつ泣き止んできた。
小さな子独特の甘い香りが俺を包む。
こんなにも愛希は俺の腕の中で"生きている"のに。