【完】俺が消えてしまう前に

あてもないまま歩き続けた。
通りすがる人たちは俺に見向きもしない。

俺自身も誰かに声をかけようという気持ちにはなれなかった。



辺りは少し明るくなってきた。
きっと朝がやってくるんだろう。

人ごみや車もさっきより多くなってきたし。



俺はとりあえず
最初の公園に戻る事にした。

あの公園にいたという事は、きっと何か意味があるはずだから。

あそこへ戻れば何かあるかもしれない。



俺は足早にあの公園に向かった。


なぜか足取りは軽く、結構走った時間もあったのに息切れ一つしていない自分。

「・・・?」

軽い違和感を覚えながら、
シーソーやジャングルジム、ブランコ、すべり台。
それらをじっくりと見始めた。


「特に何もないな」



どれだけ見ても、何も変わったところはない。
ごく普通の公園にある遊具たちだ。


自分が倒れていたところにも何かが落ちているというわけでもなかった。





「・・・なんなんだ。一体」


自分の正体も分からず、
どうしてここにいたのかも分からず。


どうすればいいのか途方に暮れた。


公園のベンチに座り、ぼーっとしていると
ふと目の前に小さな女の子が立っていた。


「わっ!」


思わず驚き、俺はベンチからひっくり返る。


その姿が面白かったのか目の前の女の子は「くすくす」と笑っていた。
< 2 / 166 >

この作品をシェア

pagetop